ふと思い立って、ずっと読まないで取っておいた赤江瀑の文庫を片っ端から読み始めた。その流れで、というか、棚に並べてある本を順に端から手に取ったので、既読の『夜叉の舌』、『オイディプスの刃』『花酔い』も久々に再読。
読み始めて時間が経てば、さらりと、それでもワインのような後味を感じながら、ずっと読み続けていられるのだけど、やはり読み始めは、その文体、その世界にのめり込む態勢が出来ていないせいか、時間が掛かってしまう。
オイディプスの刃』を初めて読んだ時は、確か学生の頃で、その時の感じたことも本の内容も、いまいち上手く思い出せないような読み方をしていたのにもかかわらず、今この年齢になって読み始めてみたら、朧気に何か、その時の感情が浮上してきて、それとはまた別に新たな感動が生まれてきた。再読の楽しみ。それは今まであまり味わっていなくて(漫画は良く読み返すのだけど)、再読した作品と言えば泉鏡花岩波文庫に収まっている諸作品と、エフィンジャーの『重力が衰える時』くらいのものだ。
エフィンジャーを再読した時は、森奈津子が指摘したジェンダーを取り扱ったSFという読み方をしたのだけど、鏡花は読み返すたびに違う感情が湧き出て来る。自分が本を、ひとりの作家が生み出した世界を味わっていると言うことを指摘してくれる。
赤江瀑も、今回再読して、鏡花の流れに繋がるのだな、と誰もが指摘していることを強く感じた。

ま、それだけのコトなのだけど。

自分の中で作った約束で積読消化したら本を買う、というコトになっているので、久々にジュンク堂で衝動的な感じで本を買ってきた。実は本を買う、買う本を選ぶと言う行為の方が、本を読むという行為よりも楽しいのかもしれない、と不謹慎なコトを考えたり。人の書評が気になって本を選んだり、装丁が気になったり作者が気になったり。
そろそろ新しい出会いが欲しいのですよ。